漢方薬は、植物の根や皮を使った薬です。抗生物質のように、特定の菌を殺すというものではなく、人間の自然治癒力を高めたり、複数の症状を緩和させる目的で使います。

下痢に漢方薬がよく用いられるのは、下痢の原因が1つとは限らないからです。ストレスや冷え、食生活の乱れといった複数の症状から下痢が起こることは珍しくなく、むしろ普通のことだと思います。

こういった複数の症状に強いのが漢方薬です。冷えを取り除きながらストレスを緩和したり、食欲不振を改善したりと、患者の症状に合わせて処方されます。

下痢に対して使われる主な漢方薬

名称 説明(どんな人に有効か)
半夏瀉心湯 過敏性腸症候群の下痢型で一番使われる、ストレスに対して有効
人参湯 半夏瀉心湯が適した人よりもさらに虚弱体質で冷えが強い場合に
真武湯 体を温め、体の機能を高める より重症な下痢
四君子湯 食欲不振や疲れがあり、痩せ気味で顔色が悪い
六君子湯 四君子等に半夏と陳皮を混ぜたもの、より体力が無い人に
桂枝加芍薬湯 お腹に冷えがあり、筋肉が緊張している人に有効
啓脾湯 胃腸の働きを助ける、消化不良
五苓散 水分循環を改善 冷たい水の飲み過ぎなどに
小建中湯 子供に使うことが多い、偏食気味
当帰建中湯 痔や脱肛の痛みを和らげる

などが一般的です。

その中でも特に処方されるものや、効果が似たものなどをご紹介します。

半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

半夏瀉心湯は、下痢型の過敏性腸症候群の患者さんに対してよく処方される漢方薬です。漢方薬で過敏性腸症候群(慢性下痢)を改善したい場合、まず初めに選択されます。

みぞおちのつかえや吐き気、お腹がぐるぐる鳴るなどの症状があるときに使うのが一般的ですが、軟便や泥状の便、下痢といった症状に対しても効果があります。

ストレスに対しても有効で、精神的なストレスが原因で起こる「自律神経失調症」でも処方されることがあります。

下痢の症状と、その下痢の原因となっているストレスの両方に対して効果があるので、ストレスが引き金となって起こる過敏性腸症候群にピッタリです。

桂枝加芍薬湯

桂枝加芍薬湯はお腹の冷えに対する薬です。便秘型の過敏性腸症候群でも使われますが、下痢にも効果があります。

お腹の冷えと、筋肉の緊張が見られる場合は桂枝加芍薬湯を使います。お腹の張り、腹痛、便秘や下痢、おならといった症状に対して有効です。

筋肉の緊張はストレスと直結しているため、過敏性腸症候群で使われることがとても多いです。半夏瀉心湯と並ぶぐらい処方される頻度は高いです。

人物1_普通

私が中学生の頃、始めて過敏性腸症候群で病院に行ったのですが、その時に桂枝加芍薬湯を処方してもらいました。

先生_2

過敏性腸症候群の人は常にストレスで体が緊張していて、腸の動きも悪く、お腹が冷えています。下痢だけでなく、ガスが多い人にも有効ですし、便秘と下痢を繰り返す混合型にも効果的です。

人参湯

半夏瀉心湯や桂枝加芍薬湯の対象になる人よりも冷えの症状が強く、体力の低下も見られる場合には人参湯が用いられます。

下痢に加え、胃腸の機能低下(食欲不振、胃もたれ、胃痛)、冷たいものの取り過ぎなどで起こった下痢や腹痛、腹部の膨満感、手足の冷えといった症状に有効です。

夏場にアイスをたくさん食べてしまったり、冷たい飲み物ばかり飲んでお腹の調子が悪い時などに服用することもあります。

人参湯と半夏瀉心湯の違いは、体力があるかないかです。体力があって疲れてもいないのに、通勤や通学、会議や授業中といった特定の場面でのみ下痢になるというような、典型的な過敏性腸症候群の人に向いているのは半夏瀉心湯です。

真武湯

真武湯は、人参湯よりもさらに冷えが強い場合に使います。人参湯は手足の冷えやお腹の冷えがある場合に使いますが、真武湯は全身の冷えが見られ、体力低下がひどい場合に使うことが多いです。

下痢、食欲不振、胃もたれなどの症状の他に、全身の倦怠感、体の重さを感じる、めまいなどに有効です。

人参湯と真武湯の違い

人参湯と真武湯はどちらも虚弱体質の人に使うものです。違いは主剤(メインとなる材料)の違いで、人参湯は人参、真武湯は附子(ブシ)を使っています。

人参湯は胃腸を温め、手足の冷えに効果があります。真武湯は心臓や腎臓といった部分の血流を良くして体全体を暖める効果があります。

このように、同じ「冷え」という症状に対する薬でも働きかける部分が全然違うので、自分に合っていないものを選んでしまうと、ちゃんと効果がでないこともあります。

漢方薬に関するよくある質問

同じような効果のお薬がいくつもあるのはなぜ?

前の方でもお話しましたが、同じような効果であっても、どの部分に効いてくるのかが違うため、厳密にはちょっと違います。

また、漢方薬は色々な材料を組み合わせて作るお薬なので、違う名前の漢方薬であっても、同じ材料を使っていることがあるので、効果がかぶることはよくあります。

例えば、人参湯は「人参、蒼朮(ソウジュツ)、天草、乾姜(カンキョウ)」が配合されていますが、六君子湯は、それらに「茯苓(ブクリョウ)と大棗(大棗)」を組み合わせたものです。

このように、元々あった組み合わせにプラスして新しい漢方薬を作ることもあるため、効果が似通うこともあります。

kanpou_1

漢方薬には副作用がないって本当?

昔から、「漢方薬には副作用がない」という声を耳にするのですが、これは大きな間違いです。西洋薬(抗生物質など)に比べると副作用は見られにくいですが、だからといって副作用がまったく無いわけではありません。

体に合わないものを飲むと、効果が全く出なかったり、症状が悪化することもあります。なので、まずは医師に相談し、自分はどんな体質なのか、どんなお薬が体に合っているのかをちゃんと教えてもらいましょう。

漢方薬の飲み方は?

食前や食間は漢方に含まれる生薬の吸収が速やかになるため、服用するなら食前か食間に服用するのがオススメです。食前は30分前、食間は食後3時間ぐらいを指します。

また、飲むときは必ず水かお湯にしましょう。ジュースなどで飲むと生薬と反応してしまいます。

とはいえ、漢方薬を服用する上で一番大切なのは継続して飲み続けることなので、飲み忘れがあったら食後に飲んでもOKです。まずはしっかり続けることを目標にしましょう。

漢方薬と乳酸菌の相性は?どっちのほうがおすすめ?

漢方薬と乳酸菌は、そもそも全く違うものです。乳酸菌は薬ではないので、漢方薬を飲んでいる時に摂取しても問題ありません。むしろ、一緒に摂取することで漢方薬の効き目をアップさせる事ができるとも言われています。

乳酸菌を積極的に取り入れれば、腸内細菌のバランスを改善することができます。漢方薬は飲み続けることで次第に効果が現れてくるのですが、腸内環境を整えておくと、漢方の効果が早めに出る場合があります。

どちらのほうがオススメということではなく、乳酸菌は日常的に摂取するようにし、漢方薬は症状が改善したら少しずつ量を減らしていきましょう。

善玉菌を増やして下痢を改善する

慢性的な下痢の主な原因は、ストレスや生活習慣の乱れによって起きた腸内バランスの悪化です。下痢を改善するには、腸内環境の改善が欠かせません。

乳酸菌は善玉菌のエサになり、悪玉菌を抑制します。普段からストレスを感じていたり、通勤や通学途中でゴロゴロ、トイレを探すのが日課になっているという人は、乳酸菌を始めてみましょう。

乳酸菌は毎日続けないと意味がありません。ヨーグルトを買ってもすぐに食べ忘れてしまったり、買い忘れてしまう人はサプリメントがおすすめです。